『キングコング対ゴジラ』予告編には音楽の違う2種類のものがある。ひとつはこの時代のほかの映画と同じように、同じ作曲家、あるいは同じジャンルの映画から音楽を流用したもの。『モスラ』の太鼓で始まり、『地球防衛軍』『妖星ゴラス』『ゴジラ』『大怪獣バラン』の曲のもの。
もうひとつは、すべて『キングコング対ゴジラ』用の曲が使われているもの(ただしタイトル部分だけ『妖星ゴラス』)。自分は東宝レコード「ゴジラ2」でこちらを聴いていたので、のちに流用曲版を聴いてびっくりしたものでした。
(そういえばこの『ゴラス』の曲の部分は、なぜか東宝レコード「ゴジラ2」ではカットされていたのでした。なぜ?)
前者を「流用曲版」、後者を「本篇曲版」と(勝手に)呼称する。
(ちょうどいい動画があったので拾ってきましたw)
そして1991年のカットネガ使用LDや2003年のDVD
(『妖星ゴラス』もステレオ録音があるので、タイトル部分に使えたわけですね)
また1991年LD制作の際に発見された英語音声(今回のBDにノンスーパー映像と併せて収録)も、音声は本篇曲版となっている。ステレオで作ったり英語版作ったりをチャンピオンまつりでする意味もなく、これらは当然昭和37年公開時に作られたものと考えるのが自然かと。
ちなみに現在日本映画専門チャンネルで絶賛放映中の予告篇は、「怪獣マーチ」アレンジ曲に乗せてチャンピオンまつりの併映作品告知がうしろにあるもので、こちらの音声が流用曲版であることから、「流用曲版はチャンピオンまつり用に作ったんだ」と言われていた時代もありました。
しかし東宝予告篇研究の雄、T氏によると、30周年マークつきの予告篇でなおかつ音声が流用曲版のものを東宝創立50年のころの予告篇大会で確認しているとのこと。それに流用曲版も01に記したとおりの原則に基づいて選曲されており、こちらも公開当時の制作とみて間違いない。
なので今回のBDでは、30周年+東宝スコープのオリジナル予告篇の音声に、この「流用曲版」と「本篇曲版」を2重音声で入れましょう、と提案したのですが、なんか仕様の問題とかでできないと言われて(^^; なので時間のある人は素材を組み合わせて再現してくださいな。
ちなみにBDの英語音声版の映像となっているノンスーパー画面は、単に現在の予告ネガを字幕を重ねずに焼くとこうなるというだけで、東宝マークも差し替え済みになっています。これは20数年前のLD制作時の素材そのままなので画質もアップコン。残念。
以後は余談。
ほかに予告篇に本篇音楽を使っている『モスラ』『キスカ』『日本海大海戦』などは、やはりどれも本篇が多元磁気立体音響(ステレオ)なんですよね。なのでこれらも現在見られるものとは別の、流用曲版音声があるんじゃないかと昔から疑っているんですが。
例外1『地球防衛軍』。これはもちろんモノラル音声なんだけど、予告篇には本篇音楽を使っている。予告篇制作が遅かったのか、音楽録音が早かったのか、あるいはこの予告も東宝の新音響システム告知をかねてパースペクター仕様になってるとか!(確認のしようがないw)
例外2『妖星ゴラス』。逆にコレは流用曲版しか見たことがないし商品化もそれだけしかないですが、ひょっとしてこれも本篇曲版のステレオ音声予告があったりするんじゃないかと。というより時期的にもそして磁気的にもw、ステレオ版がない方がおかしい、と推測しています。東宝の倉庫で音ネガを捜してみたいよう!
……ああっ、でももう東宝のシネテープはもう劣化してへろへろ状態なんだろうなあ。(詳しくは東宝ミュージック『世界大戦争』サントラ解説に書いてある……らしいw)『キンゴジ』ステレオ予告はあのLDのときに商品化しておいてよかったなあ。2種音声の存在の意味が危うく永遠の謎になるところだった。
▼東宝特撮予告篇研究に関する、たいへん参考になる記事です。
四式楽屋裏:東宝半世紀傑作フェアに於ける東宝映画予告篇大会